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「うん、由奈も健吾と一緒に逝っちゃった」 「もう十四年も前の話、今更蒸し返してもしょうがないのはわかっているけど、あの時、居眠り運転してお兄ちゃん達のバスに突っ込んだ運転手、今ものうのうと生きてるんだよ。許せない!」 「確か、ダンプだったよね」 「そうだよ。緑山商会って会社の緑色のダンプ。今でも忘れない」 「そうだったね。どうして居眠りなんてしたんだろうね」  わたしは力なくそう呟いた。今更、なんの意味も持たない言葉だと知っていたから、息を吐き出すように咳くしかなかったのだ。だって、もう過ぎてしまった過去をどう詮索しても、悔やんでも、どうにもならない。亡くしてしまった命は二度と返ってはこないのだから。    その時「時間が戻せたらいいのに」と梓がポツリと言った。 「時間が?」 「うん、時間が戻せたら、あたしは絶対に衝突する前のダンプの運転手を起こす。起こして、あの事故を回避するんだ」 「梓、貴女、面白いこと考えるのね」 「この前やってた二時間ドラマで観たの。主人公が過去にタイムスリップして未来を変えるって頑張ってた」 「未来を変えるかあ〜。本当にそんなことが、できればいいのに」 わたしはそう言って、彼女と顔を見合わせて微笑した。 「そろそろ、いこうか」 梓がハンドルを握る。    気がつくと、横殴りのどしゃ降りだった雨が、小雨に変わっていた。アパートの前まで送って貰い、車から降りると「久し振りなんだし、ちょっと寄ってかない?」とわたしは彼女を誘った。 「ううん、もう遅いし、またゆっくり遊びに来るよ」 「そう」 梓の返答に、少しだけ肩が落ちた。今夜は一人でいたくない。なんとなく、そう思ったのだ。 「じゃあ、またね」 笑顔で手を振る梓。 「あっ、ちょっと待って!」 ロが勝手に彼女を引き留めた。  梓が不思議そうな顔をして、車内からわたしを見上げる。 「なに?」 「えっとぉ〜」呼び止めてしまった手前、わたしは次の言葉の検索を始めた。「あっ、あのさ、運命の人ってなんで思ったの?」咄嗟のこととはいえ、無意味な質問を梓に投げがける。 「運命の人、ああ、進ちゃんのこと?」   必要以上に領くわたし。「そうそう、進ちゃんのこと」 「えっとね、出逢い方がちょっと変わってたから、そう思ったの」 「出逢い方?」 「うん、あたし違メールで知り合ったから」 「メール、出逢い系とか?」 「違うよ。あたしが過去に使っていたアドレスに、いたずらしてメールを送信したの。そしたら彼と繋がったのよ」
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