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(あの事故さえ起こらなかったら) (健吾と由奈が、今も隣で笑っていてくれたら)  きっとこのアルバムは途中で途切れることなく、数々の大切な思い出を刻み続けたのだろう。    わたしは、途中から空白になったページを何枚も捲り、一番後ろのページを開いた。  忌わしい断聞記事が貼ってある。 【飯綱山、下山途中の高校生らを乗せたバスに、居眠り運転のダンプが激突。バス、崖から谷底へ転落。全員即死!】 その後に続く詳しい詳細。当時、新聞の一面をかざった記事である。わたしは、その詳細に目を通した。いつも途中で泣きだしてしまう為、最後まで読んだことのない文面。 (今度こそ)と思ったが、やはり無理だ。また視界が滲みはじめた。  それと同時に、腹からわきあがってくる地鳴りのような声。 (まただ)と思った。この記事を観る度に過去にタイムスリップしてしまう心。止めようとしても止まらない感情。 「うあぁぁっ」 次第に大きくなる嗚咽を封印をするように、両手でロを塞いだ。その両手が、後から後へと流れ落ちてくる水滴でぐしょぐしょになる。 「うああぁぁぁあーっ」 そのままこらえきれなくなったわたしは、新聞記事の上に額を擦りつけ、悲鳴に似た絶叫をあげた。    テレビ画面の中から聞こえてくる笑い声。その声を掻き消してしまう位の大きな声でわたしは泣いた。    どの位の時間、泣いていたのだろうか?突然、けたたましい銃声音で顔を上げるわたし。音の方に振り向くと、テレビ画面がお笑いから洋画に変わっていた。    しぶとく下睫毛に残る塩水を指の腹で拭いながら、リモコンを拾いテレビの電源を切る。    その時。ソファーの上に役げ捨ててあるバッグの中から短いメロディーが流れた。これはメールの受信音だ。フラつきながら立ち上がり、バッグの中に手を入れ携帯を取り出す。そのままソファーに腰を降ろし、メールを確認してみる。全く見覚えのないアドレスからだった。 「アナタは今、幸せですか?」って書いてある。 「幸せですかって、幸せならこんな深夜に一人で泣く訳ないでしょ!」  わたしはそう言い捨てると、携帯をソファーの上に投げた。ただの間違いメールだ。天井を見上げて大きな溜め息を吐きだす。だが、(いや、待てよ)と思い直し、再び携帯を手に取った。    梓が先ほど言っていたことを思い出したのだ。確か彼女は冗談半分に、過去つかっていた自分のアドレスに【アナタは今、幸せですか?】そう書き込んでメールを送信したと言っていた 。 「アナタは今、幸せですか?」文面を口に出して読んでみる。もしかしたら、間違いメールじゃないかも知れない。とりあえずわたしは、「アナタは誰?」と書いて返信を送ることにした。すると、すぐに返事が届く。
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