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「びっくりした!まさか送信できるなんて思わなかったし、返信が来るとも思わなかった」 (やっぱり)と思った。この人は、過去の自分のアドレスにメールを送ったんだ。    梓といい、こんなことをしてなんになるのだろう? 「アナタ、前に使っていたアドレスにメールを送ったんでしょう?」 喉にこもる笑いを噛み殺しながら送信ボタンを押す。 「そうよ。その通りよ!どうしてわかったの?」 「知り合いがね、同じことをして知り合った男と付き合ってるのよ。今、こういうの流行ってるのかしら?」 「さあ、わからない。でもわたしは男じゃないからアナタとは付き合えそうもないわ」 「そう、でもわたしが男かも」 「わたしっていう男、ゲイ?」 「アハハッ!」 思わず声をだして笑った。中々面白そうな人だ。 「違うわよ。わたしは正真証明の女よ。しかも、もうすぐ三十路で結婚もできない寂しい女よ」    送信後、見知らぬ他人にこんなことを教えてどうなるのだろう。ふと、そう思った。すぐに彼女からの返信が届く。 「あら、可哀想。でも安心して、わたしの方がもっと寂しい女だから。四十五才で独身。これまでの人生を振り返っても、ろくなことがなかったわ」 「そうなの?」 本当なら、明らかに彼女は今の自分より寂しそうだ。意味のない安心感と同情が入り交じった不思議な気持ちになる。 「そうよ。アナタのメルアド使ってた時も、寂しくてよく泣いてたわ」 「嫌だわ、今のわたしと一緒ね。アドレスが悪いのかしら?」 「失礼ね。そのアドレス、わたしのイニシャルと誕生日の組み合わせよ」 「えっ、ちょっと待って、その組み合わせ、わたしと一緒だよ!」 「そうなの?もしかしてアナタの誕生日って、十月三十一日?」 「そうよ!十月三十一日、サソリ座よ」  凄い!わたしと一緒だ。 「ねぇ、アナタ名前は?もしかして一緒だったりして」 そこまで書き込み(いやいや、そこまで偶然はないだろう)と首を横に振る。だけど、もしかしたら。 「わたしの名前は、朝倉澪っていうのよ」そう書き込み完了して送信を押した。なんとなくワクワクする。  だが、そのメールは届かず、すぐに宛先不明の文字が画面表示された。
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