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「いいえ、間違えてなんていないわ。わたしはアナタに幸せですか?って聞いたのよ」   数分置いてから返信が届く。 「間違えてないってどういうこと?わたしの方はアナタのアドレスに見覚えなんてないわ。アナタはわたしを知ってるの?」 (わたし)わたしってことは、相手は女だ。 「アナタを知ってるか?って聞かれたら知らない。だけど、アナタのメールアドレスなら良く知ってるわ」 「どうして、なぜわたしのアドレスを知ってるの?」 「アナタのアドレスは、わたしが五年前まで使っていたアドレスなの」 「えぇーっ、そうなの、面白いね。じゃあさっきの質問に答えるけど、全然幸せじゃないわ。まさに不幸のどん底だよ」 (あらあら、こちらも不幸なの?)わたしは苦笑いで頭をポリポリかいた。「なんで不幸なの?」聞いてみる。すると「失恋したから」と答えが返ってきた。「 「失恋、彼氏に?」 「彼氏じゃない。片想いしてたの」 「告白して振られたの?」 あんまりしつこく聞くのは失礼かとも思ったが、この後に(実は自分も)と打ち明ければいい。そんな覚悟をして聞いてみた。    彼女から返信が届く。わたしは瞳を丸くさせた。「告白なんかしてないよ」 「告白もしてなくて、どうして失恋だってわかるのよ?」 「友達がさっき告白してる所を見ちゃったんだよ。だからあきらめたの」 「そうか、で、彼がOKしちゃったのね。そりゃあ辛いよね」 「ううん、そこまでは見てないし、走って帰って来ちゃったから」 「はっ?見てないの?友達振られたかも知れないじゃない」 「それはありえないよ。その娘かなり美人だもん。それに親友だし、もめたくない」    わたしは肩で息をついた。なんだか、この娘の気持ちが手に取るように理解できる。そう思ったのだ。メール内容からして、そうとう若そうな、まだ十代、そんな所だろうか? 「アナタ、何才?」聞いてみる。 「十五才。今年で十六になる。高校一年生だよ。アナタは?」    痛い所をつかれた。顔も見えないのに、いくつに見える?なんて聞ける訳もなく、わたしは仕方なしに「二十九才、今年で三十になる寂しい独身よ」と余計なことまで書き込んで送信した。 「二十九才、大人の女性なのね。恋愛経験も豊富なんでしょうね」
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