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「なんだよ、いい所で邪魔すんな」
唇を離す健吾。
「だって初めてで、息の仕方がわかんない。死んじゃうよ」
澪は苦しげに彼を見上げた。
「じゃあ、死ね」
健吾は意地悪そうに微笑むと、再びキスを唇に落とす。
その瞬間に彼女の視界は、深い闇に包まれた。
次に目を開けた時、澪はなぜか、合宿所の医務室のベッドに寝かされていた。
「えっ!」
驚いて飛び起きる。
白い掛け布団の上にバサリと落ちる四角折りの湿ったタオル。
「朝倉さん、まだ起きてはダメよ。寝ていなさい」
テニス部顧問の平井彩子が慌ててベッドサイドに駆け寄った。
確か、さっきまで健吾といたはず。
「先生、わたし、どうしちゃったの?」
澪はキツネにでもバカされたような顔をして彩子を見た。
瞬間、軽い目弦が視界を歪める。
「とにかく横になりなさい」
彩子はそう言うと、澪の身体を強制的に倒す。「今、説明してあげるから」タオルを氷水に浸して、きつく校った。
額に乗せられるタオル。冷たくて気持ちがいい。
澪は目を閉じた。
「倒れて意識を失ったのよ」
彩子の言葉に驚き、タオルを取る澪。
「倒れた、どこで?」
「さあ、それはサッカー部の生田健吾君に聞いて、彼が貴女を運んで来たんだから」
彩子は意味深な笑みを浮かべた。
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