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一番大切なことを彼女に伝えなきゃいけない。
「わたし健吾も大事だけど、由奈も大好きなんだよ。失いたくない!」
「あははっ」
由奈は大声で笑うと「ねえ澪、あたしら男ごときで崩れるような付き合いしてたっけ?」澪の鼻をつまみあげて聞いた。
「じぃてぇません」
きつく鼻をつままれて、問えながら答える。
「よし、それでいい」
由奈は軽くウィンクすると、更に大きな声で高笑いした。
「さてと、邪魔者はそろそろ退散するかな」立ち上がり、後ろに振り返る。
由奈の視線の先、そこには、ドアにもたれかかりながらこちらを見ている健吾が立っていた。健吾に気がつくと、澪の頬は一気に赤らんだ。
健吾が由奈を見る。「ごめんな、由奈」
彼女が健吾に言い返した。「あたし程の美少女を振ったんだから、覚悟はできてるよね?」
覚悟?意味がわからずに、澪は二人を交互に見る。
「あたしの大事な親友、泣かせたら承知しないんだから!」
その後、彼女は彼にそう言った。
「わかってる」
頷く健吾。
「ゆなぁ〜」
澪の涙腺が、また崩壊を始める。
「じゃあね!」
由奈は健吾と澪に笑顔を向けると、医務室の扉を開いた。
パタンッと音をたてて閉まるドア。二人っきりになった医務室。健吾がゆっくりと澪に歩み寄った。「マジで、さっきは焦った」澪を軽々と抱き上げてベッドに寝かせる。
「キスの最中で気を失っちまうんだもんな」健吾は、布団をかぶせて真上から澪の顔を覗き込んだ。
「ごめん夏風邪かも、健吾にうつしちゃってたらどうしよう?」
心拍致が頂点に達した。彼の顔が近すぎてまともに見れない。目線を横に反らす。
「そんなことより、もっと他のこと心配しろよ」
彼の両手が澪の頬を優しく包むと同時、強制的に目線を合わされた。
湯上がりみたいな顔で瞬きを繰り返す澪。「えっ、他のことって?」
「初デートの日取りだよ。早くしねーと夏休み終わっちまうだろ」
「うっ、うん」
「風邪治ったら、どこ行きたい?」
健吾が聞いた。
「健吾と一緒なら、どこでもいい」
笑う健吾。「バーカ、それじゃ答えになってねーよ」
「だって、本当だもん。健吾と一緒なら、どこでも楽しい」
瞬間、彼の表情が真顔に変わった。「ずっと、一緒にいような」澪に囁く。
「うん、約束だよ、ずっと一緒にいてね」
澪は答えて彼のジャージの胸元をそっと掴んだ。嬉しすぎて心が震える。
「その涙目、マジ反則だ」健吾は顔を近づけると、そっと澪の唇にキスを落とした。
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