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信じられなくて、携帯を持ったまま、口を両手で塞いだ。
思考回路はかなり混乱してる。だけど事実、わたしには二つの記憶があるのだ。だからこれだけは言える。最初にはなかった記憶があるってことは、過去が変わったのだ。
自分自身とメールすることによって、わたしは過去を変えてしまった!いくら混乱した頭を抱えても、もうそうとしか説明がつかない。
その時、携帯の受信音が鳴った。慌ててメールを開くわたし。彼女からだった。
「お姉さん、感謝です。彼と両想いになれたし友情も壊れずにすみました」
わたしは早打ちで彼女にメールを返した。
「アナタ、名前は?」
「はい、朝倉澪です。お姉さんはなんて名前ですか?」
「朝倉澪!やっばりそうだ!」
画面を見ながら叫び声をあげる。
再びメールを早打ちする。「今、西暦何年?」
「西暦ですか?二00七年ですけど、どうしました?」
二00七年。壁のカレンダーに視線を向けて逆算してみる。十四年前だ。
「何月何日?」
「八月二十日です」
わたしは、床の上のアルバムめがけてダッシュで滑り込んだ。アルバムを手に取り最後のページを開く。 しっかりと貼られてあるバス転落事故の記事。
二00七年、八月二十日、事故は今日起こる。
瞬間、健吾の妹、梓の声が頭の中に響いた。
(時間が戻せたら、あたしは絶対に衝突する前のダンプの運転手を起こす。起こして、あの事故を回避するんだ)
「健吾と両想いになれた」と、わたしにメールしてる澪は、今、恐らくあの事故の起こる前の時間にいる。この娘の行動が、そのままわたしの過去になるんだ!健吾も由奈も、まだ生きている!
その瞬間、目の前に一筋の光が横一線に走り抜けた。
未来が、今が、変えられるかも知れない!
「澪、これから、わたしがメールする内容を読んでも、鷲かないでね」先にそうメールを送信すると、わたしはこの不可思議な事実の全容を書き込んで彼女に送った。
「はっ?なに、これ!」澪は、思わず叫んだ。
お姉さんが、わたしの十四年後?頭がどうかしてるんじゃないの?首を傾げた。続けて鳴る受信音。
「信じられないかも知れないけど、事実なのよ」
「悪いけど、わたしそういう未知の世界っての、信じないたちなの」
「そうよね、わたしも未だにそうだから、アナタの気持ち良くわかる。いいわ、次のメールで信じさせてあげる」
それからお姉さんのメールは途絶えた。
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