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「なる程!」 一人頷く澪。    運転手が怪爵な顔をしてミラーを除いた。  続けてメールが届く。 「澪、驚かないで読んでね。今日八月二十日、午前九時四十分、飯綱高原から下ってくるバスが、登りのダンプと正面衝突して崖から谷底へ転落するの。そのバスに乗っていた二十四名、及び、バスの運転手。総勢二十五名が即死するのよ」 「なんですって!」 驚く澪。 しかし、次に届いた彼女のメールを読み終えた途端に、その驚きは恐怖に変わった。 「二台続きで下るバスの一台目がダンプと正面衝突するの。そのバスに乗っていたのは、長野篠井高校のテニス部とサッカー部の生徒。後は、テニス部顧問の彩子先生。健吾と由奈も乗っているわ。澪、健吾も由奈も、今日死んでしまうの!」 「嘘よ、嘘でしょう?」 慌てて、澪は返信を返す。 「信じて、嘘じゃない。十四年後のこの世界には、健吾も由奈も存在しないのよ。死んでしまったの!わたしは、ずっとその悲しみを背負って苦しんできたの」 「嫌よ、そんなのいやあーっ!」 澪は絶叫した。    驚いた運転手が、慌ててウィンカーを上げて車を路肩に急停車させる。「どうしたんだ、お嬢ちゃん!」澪に振り返った。    無言で顔面蒼白に携帯を見詰める澪。手が震えているのか、携帯画面が小刻みに揺れていた。彼女からメールが届く。 「みんなを救えるのはアナタしかいない。普段、無人の合宿所に固定電話はないはず。今すぐに顧問の先生の携帯にかけて!バスの出発を遅らせるの」    澪はすぐに彩子の番号を表示した。だけど山にいて電波状況が悪いせいか繋がらない。健吾と由奈、可能な限りの携帯に電話してみる。だけど、皆同じで繋がらなかった。 「繋がらない!」涙目で送信する。すぐに返信がきた。 「澪、すぐにUターンして!飯綱山に戻るの」 (戻る?) 「だって、それでわたしに何ができるの?健吾達を乗せたバスは、きっともうすぐ出発するわ」 「事故はね、ダンプの運転手の居眠りによって起こるの。残る方法は一つ、今から追いかけて衝突前にダンプの運転手を起こすのよ。そして停車させる。事故を回避させるのよ」 (運転手の居眠り)澪の脳裏に一筋の光が走った。震えていた手がビタリと止まる。携帯で時刻を確認した。今、午前九時0八分。衝突まで後、約三十分程しかない。 「やるしかないんだ!」澪は顔を上げると叫んだ。「運転手さん、今すぐ飯綱に引き返して!」 rへっ?なんでまた?」聞き返す運転手。 「いいから早くして、時間がないの!」車内に響く怒鳴り声。驚いた運転手は、慌てて車をUターンさせた。 「今、飯綱に向かってる。そのダンプの詳しい情報を教えて」そう書き込むと、澪は彼女に向かって送信ボタンを押す。すぐに返信が届いた。 「信じてくれて有り難う。ダンプは緑山商会と言う会社のダンプよ。車体は緑色。運転席側のドアに会社名が黒文字で書かれてるわ。衡突場所は、山の中間付近。確か登り始めてからニつ目のトンネルを抜けた登坂斜線が終わってすくのカーブだったわ」
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