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コラボ企画(おまけ2)
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ロビーでの空気感のまま会合は幕を明けた。
世間を吹き抜ける不況の風の煽りを真面に受けている建設業界。
この未曾有の事態を打破するために集まった戦略会議の筈なのに、話し合いはまるで緊張感がなく何もかもが型通り。議事は淡々と進められていく。
「他にご意見は御座いませんね…では、本日の______」
とっとと締めに入ろうとする司会進行役の言葉を遮るように真柴が手を挙げた。
「ひとつ提案があります」
場がどよめいた。
視線が一斉に真柴へと集まる。
その目は一様に『若造は黙っていろ』と言っている。
見るからに教条主義といった体の進行役の男は黒縁メガネを弄りなが上目遣いに辺りを見回した。
”空気読めよ”とばかりに大きなため息を吐くと
「申し訳ありませんがお時間の方が差し迫って____________」
「あら、おかしいわね。私の時計だとまだ30分も残っているけど」
すかさず凉袮が高級ブランドの時計を巻いた華奢な手首を高く掲げた。
「……では、真柴さん。どうぞ…」
男は苦虫を噛み潰したような顔をして発言を許可した。
「ありがとうございます」
対する真柴は爽やかに微笑み、一礼して立ち上がる。
「私からご提案したいのは_______________」
かなり奇抜なアイディアだが、現状を打破するためにはこの位インパクトのある改革が必要だ。
自信はある…が、頭の固い長老軍団の首を縦に振らせることが出来るか。
その一点だけがこの提案のウィークポイント。
案の定、真柴に注がれる視線は突き刺さるように冷ややかで、どの顔も明らかな拒絶の色を浮かべている。
「ふぅーん。何だか面白そうね」
凉袮が声を張り上げた。
「それで、真柴さん。貴方の案で採算は取れるのよね?」
その目は鋭く光っている。本気モードの証拠だ。
真柴は口元に不敵な笑みを浮かべた。
「勿論ですよ、地主園さん。
負け戦に身を投じるほど痴れ者では無いんでね。
お手元の資料をご覧下さい。シミュレーションの結果をデータ化したものを載せています」
凉袮がページを捲ると、周りにいた長老たちもつられて資料に目を通し始める。
そこには誰もが納得するような根拠が事細かに数値化されていた。
「Excellent!」
流暢な英語が凉袮の口が溢れる。
「いや、でもね…データで結果が出たからって実際に上手くいくとは…」
「be quiet」
バンッと机を叩く音が広い会議室に反響した。
「私くし、地主園グループ次期専務執行役員・地主園凉袮は真柴建設副社長の提案に賛同致します」
凉袮は優雅に席を立つと、困惑している御歴々の顔を見回した。
「ねぇ、皆様はどうお思いになって?
当然、同意なさるわよねっ♡」
艶やかな唇に魅惑的な微笑みを浮かべる。
「……まぁ、凉袮さんがそう言うなら…なぁ」
「そうだな。取り敢えずやってみるって事で……」
鶴の一声ならぬ美人の一笑。
提案は満場一致で受け入れられた。
ったく。助平爺どもが……
真柴は心の中で毒づいた。
凉袮の祖父は、政財界のトップにも顔が利く。
強い者には従え、か…全く心底反吐が出る_______
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煙草を灰皿にぎゅっと押し付けた。
ま、結果的にはどいつもこいつも女と権力に弱い奴で良かったけどな。
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