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休憩中
鶴来京介の実家は金沢市にある老舗呉服店だ。
今日は新春初売りの日にも関わらず、父と長兄は商工会の挨拶回りで不在。
母と兄嫁はお得意様の着付の予約が立て込んでいて、朝からてんてこ舞いしている。
そこで店番に任命されたのが、私立高校教師の次男・雅典と京介だった。
「あれ、先生?こんなトコで何しとるが?」(雅典の教え子)
「まぁ、先生。お着物よう似合うとるね」(京介の患者)
顔見知りもちらほらやって来る。
皆のお目当ては、京介の彼女・一花が考案した着物の端切れ布をリメイクした和柄マスクだ。
「わぁ、可愛い︎💕︎💕」
「これキレイ...♪*゚」
一枚一枚手に取り、瞳を輝かせる女性客達。
まるで一花の事を褒められているようで嬉しい。
俄然、接客にも力が入る。
愛想良く微笑み
「同じ布でも裁ち方によって、微妙に柄の出方が違うとるでよう見てたいま」
「ホントや!」
「ねぇ、どっちがいいけ?」
「どれにしよぅか迷うてしまうわ」
「全部買うてしまおっかな」
女性客の賑わいが店内に華やぎを添える。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••
3時を回り、店もやっと平時の落ち着きを取り戻した。
京介は奥座敷で母の入れてくれた玉露を手に一休み。
一口含むと独特の覆い香が瞬時に鼻に抜ける。
今夜は一花と香林坊に新しく出来た和食の店に行く約束をしている。
マスクの売れ行きを教えたら、頬を染めながら喜ぶだろう。
そんな一花の様子を想像する京介の口許も柔らかく緩んでいく。
さて、閉店までもうひと頑張りするか。
残りの茶を一気に飲み干すと、勢いよく立ち上がる京介なのであった。
なんて、妄想をしながら( *´艸`)
花ちゃん、お名前お借りしました
(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
2021.1.9
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