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すっかり冷めきったコーヒーを飲み干したところで着信音が響いた。
直ぐ様通話をタップする。
「どうした、お嬢。
こんな時間に電話なんて珍しいな」
返事がない.......
「お嬢?」
微かに息を呑む音が聞こえたかと思うと
「何でワンコールで出るのよ!!
びっくりするじゃない!」
自分から掛けておいて飛んだ言い種だが、全くもって美月らしい物言いに真柴の悪戯心がくすぐられる。
「そりゃ、早くお嬢の声が聞きたかったからに決まってんだろ」
スマホを握り締め、顔を真っ赤に染める美月の姿が目に浮かび、喉の奥でククッと笑った。
「で、何か用か?」
「別に用事って訳じゃないんだけど。
徹ちゃんから、今日の午後はあんたのスケジュール空いてるって聞いたから…その、どうしてるかなって思って…」
そのままモゴモゴと、口篭る。
「今どこにいるんだ?」
「学校の前よ」
コーヒーショップから、美月の通う私立高校までの道程を瞬時にシュミレートする。
「20分で行く」
「え?」
真柴は伝票を掴んで立ち上がった。
「それまで、適当に時間潰してろ」
「ちょっと待ってよ。
あたしは、迎えに来て欲しくて電話した訳じゃ……」
長いストライドでレジへと向かう。
「おれがお嬢に逢いたいんだよ」
暫しの沈黙のあと
「1秒でも遅れたら承知しないからね!」
一瞬真柴の足が止まる。
やれやれ、どちらのお嬢様も一筋縄じゃいかねぇな。
微かなため息を零す唇は、それでも柔らかな弧を描いていた。
「畏まりました、お嬢様」
fin
✄- - - - - - キ リ ト リ - - - - - ✄
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
いつかちゃんがコラボ作で美月の名前を出して下さったので最後に登場させちゃいました(声だけですが)
凉袮さんと真柴。悪戯好きなとこは似てるかも(´艸`*)
久しぶりの真柴と美月の掛け合いは、書いていてとても楽しかったです...♪*゚
最後までお付き合い下さった皆様。
そして、お話を書く切欠を与えて下さったいつかちゃん。
本当にありがとうございます!!!
2021.3.21
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