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縁
色町の外れにあるちっぽけな古道具屋『漆黒堂』
その店主・緋鍵
これは私の事でも有り私の事でも無し。
意味が分からぬ、というお顔をなさっておいでですね。
私の諱は『縁』に御座います。
では『緋鍵』は偽名か?と。
いえいえ。
先刻も申し上げました通り、半分嘘半分は真で御座います。
私の中に居る“人ならざる者“の名が『緋鍵』なのです。
おや?
鼻で嗤っていらっしゃいますね。
お信じにならないのですか。
であれば、百聞は一見にしかず。
緋鍵をお見せ致しましょう。
我が額に開く緋色の瞳が緋鍵で御座います。
これは、愕かせてしまいましたか。
御安心なさいませ。
ご覧のように『瞳』のみ故、平時は大人しいものです。
決して取って喰ろうたりなど致しませぬ。
如何なれば、さても面妖な有様になったのか?
語れば一朝一夕に済む話では御座いませぬので、それは後々に。
では、緋鍵とは何者ぞ?
然かし、それ位なら話す間も御座いましょう。
緋鍵はあの世とこの世を隔てる門の護り役でした。
緋鍵がそうとせねば扉が開くことは無い。
ところが突然、彼奴のあずかり知らぬ間に冥の側から扉が開かれたので御座います。
600年前、紅月の宵のこと。
暗黒を彷徨い歩いていた魑魅魍魎どもは、これ幸いとばかりに現世に這い出てまいりました。
あな恐ろしや百鬼夜行。
緋鍵は咎めを受け、人の身に封じ込められました。
そして、全ての妖どもを狩り六道へと送り返す役を科せられたのです。
ほぅ?
随分と変わったことをお尋ねで。
浮世に放たれた妖どもの行方が、どうにも気になると?
中々の物好きで御座いますな。
其れは様々。
畜生に取り憑く物、古道具に入り込む物。
中には人の心に棲み付く輩もおりまする。
どうなさいましたか御武家様?
まるで瘧にでも罹ったようにがたがたと震えなさって。
先刻から、緋鍵が身の毛立つ瞳で睨めつけていると…
然もありなん。
妖を狩るのが彼奴の務めと申し上げましたでしょう。
ふふふっ…
どうやら、少々焦らしすぎたようですね。
緋鍵が痺れを切らした。
さぁて。
貴方様の心に巣食った妖は、如何ばかりでしょう。
私が祓えぬ程に深く根を張り広げているのであらば、御身ごと冥府へとお連れせねばなりませぬ。
逃げても無駄で御座いますよ。
何せ緋鍵は狩りの名手でありますから。
どうぞ、安らかに。
_____________御覚悟なさいませ。
👻💧😱💧👻💧😱💧👻💧😱💧
旧イラスト集に登場した三つ目さん。
SSを書きたくなったので、再登場いただきました。
(前回はこちら→https://estar.jp/novels/25503393/viewer?page=283 )
設定を考えるのが楽しかったです(*≧m≦)
2021.3.6
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