両鼻腔毛髪切除術

朝イチ『両鼻腔毛髪切除術』なんて言っていた人と同一人物なのか？

「いろんな家庭があって、いろんな考え方があるからね。他所(よそ)は他所(よそ)。家(うち)は家(うち)よ。」

「他所は他所、家は家…か。…まぁ、そうだよな。……母さん、もう一個聞いてもいい？」

「何でもどーぞー」

妙に楽しそうな母さん。

「母さんは何のために仕事してるんだ？」

「仕事？そりゃあ、生活のためとお金のためね。」

言いにくそうに答えるかと思いきや、あっけらかんと答えた母さんに、俺は拍子抜けしてしまう。

「生々しい答え…。」

「生々しい？現実だもの。それとも、夢と希望のためにってことにしとく？」

「夢と希望って…」

「愛と勇気だけが友達ってことにしといてもいいわよ。」

ニシシと微笑んだ後、某有名なアニメソングを口ずさみながら「じゃ、ごはん作るからー」と、台所へ消えてゆく。

……やはり、掴みどころのない母親だ。

でも、意外な一面を見た気がする。

……もう少し母の思っていること、考えてることを知りたい。

元々の性格や気質というものも関係していると思うが、『両鼻腔毛髪切除術』なんて言ってのけるデリカシーのない母も悪くはない……かな。

どこかに落とした母のデリカシーは、まだ見つからなくてもいいやと思えた今日この頃。

そんな母は、ごきげんに某アニメソングを口ずさみ続けていた。

END