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「りょうびくうもうはつせつじょじゅつした方がいいんじゃない?」
「はぁ?」
学校へ行こうとした俺に、台所で洗い物をしていた母が唐突にそんなことを言った。
突然こんなことを言う俺の母親は少々変わっている。
悪く言えば場の空気を読まない、自己中心的、思ったことをなんでも口にして、物事を深く考えない。
良く言えば明るくて、ポジティブで、マイペースで、裏表がなくて、いつも前向きで、底なしの元気。
こんな母親だからか、いつも家の中は明るく、笑いが溢れている。
俺ももう中学二年。
そろそろ反抗期で『クソババア』と母親を呼んだり、無視を決め込んだりしてもおかしくない年頃。
しかし、反抗する気も失せてしまう脳天気な母を持ったためか、俗に言う友達親子なんて言葉がぴったりな関係性となっている。
「母さん、そのりょうびくうなんちゃらって何?」
妙に難しい舌を噛みそうな言葉。
「ふふっ。ストレートに言ったら角が立っかなって。」
何か企んでいるような母の楽しそうな無邪気な笑顔。
「………」
こんな顔をしてる時の母はろくなことを考えてない。
「りょうびくうは漢字で書くと、両方の『両』に、鼻の穴って意味の『鼻腔』ね。」
と、自分の鼻を指差す母。
「両鼻腔…。次、何て言ってたっけ?」
「もうはつせつじょじゅつ。もうはつはそのままの毛と髪で『毛髪』。切り取る手術って意味の『切除術』。……意味わかった?」
両鼻腔毛髪切除術………
鼻の……毛……、切る…?
「もしかして…、鼻毛を切れと?」
「せいかーい!」
にぱっと嬉しそうな表情を浮かべた母。
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