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「ねぇ先生?あたしが戻ったらさぁ少しは未来……変わってんのかな?」
『さあどうでしょうね?そればかりは私にも分かりませんからね』
そんな他愛のない話を済ませた俺は二三さんの頭の上に手を添え、ゆっくり目を瞑る。すると俺の瞼の内側には無数の映像が浮き上がっては消え、また浮き上がっては消えていくのを永遠に繰り返していく。それは二三さんがこれまでに経験してきた、嬉しいこと、辛いこと、哀しいこと、楽しいこと、と様々だ。
その中で目に付いた一つの映像。
(これが……二三さんが過去へジャンプした時の映像で間違いなさそうだな……)と、俺は浮き上がったその映像に意識を集中させ、二三さんを未来へ飛ばそうとしたその時だった・・・ふと未来の俺が去り際に口にしたある言葉を思い出したんだ。
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「一つ頼みがある」
『頼み?』
「ああ……お前が二三さんを未来に飛ばす際に二三さんの記憶から俺がここに来たっていう事実を消して欲しいんだ」
『そんなのは今ここでお前自身がやればいいことじゃないのか?』
「駄目なんだよ……ほら、見てみろよ俺のこの手を!もうこんなにガチガチに震え上がっちまってる………こんなんじゃまともに記憶なんか消せそうにない………だから頼む!」
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未来の俺の目は真剣そのものだった。
もし俺が未来の俺と同じ立場だったなら、俺も同じ様なことをお願いするのだろうか?
いや、きっとそうするに違いない・・・なんたって未来の俺は過去の俺であり、過去の俺は未来の俺でもあるんだから・・・。
そして俺は二三さんの記憶の中から未来の俺がここに来たという映像を抜き取るのと同時に彼女を未来へと飛ばしたのであった。
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