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尾行はばれたけれど、皐月さんはべつに怒りはしなかった。むしろ睦月と会えて嬉しいとか言い出した。本当にこのひとたちは姉弟だ。
わたしたちは四人で来た道を戻る。道ばたに落としていないかの確認と、駅前に交番があるからだ。どうしてもみつからない場合は紛失届を交番で書こうという話になった。
「小山さんとか言いましたか」
「ん、なに?」
わたしは周りを窺いながらこっそり小山さんに話しかける。仲良し姉弟は数メートル前を歩いていて、わたしたちを気にしていない様子だ。
「どうしてその……ケーキ屋さんでテイクアウトした紙袋をリュックに入れたんですか」
皐月さんたちは公園でケーキを食べていなかった。考えてみればケーキ屋に行ったあとなのだから当たり前である。
「なんで知って……ああ、尾行していたんだっけ」
公園のベンチに座っていたときは紙袋が脇に置いてあった。わたしはそれをなんでわざわざ小山さんのリュックに閉まったのかが気になった。紙袋なんだから手で運びやすいはずだし、なによりリュックに入れたらせっかくのケーキが崩れてしまいそうだ。
「んーキミになら言っていいか」
実はかくかくしかじか、と小山さんは説明してわたしはふむふむと納得した。それはわたしの予想どおりの回答だった。
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