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思ってもみなかった提案
「晴香、そろそろ出かけない?」
いつの間にか熟睡していた晴香の頬をツンツン突いて奏が、晴香を起こした。
「あ、眠ってた。すぐ起きるね。」
慌てて支度をする。今日は仕事じゃないからと晴香は白のカットソーにスキニージーンズ。奏は白の綿シャツにブラックデニムのパンツだ。
車で区役所に行き、区内転居の届を出して新しい住民票を受け取り、警察や銀行に住所変更の手続きに行くともうお昼時だった。
「晴香は、何食べたい?」
「あんまり食欲ない。」
「まだ心配事があるのか?」
「うん…」
晴香が千晴からのメッセージを伝えると奏は、しばらく考えていたが晴香に提案をして来た。
「晴香は、まだ相手の男の事を忘れきれないだろうけど、俺と婚約しない?」
「え?」
「契約結婚みたいな感じ。最初に手を出しておいてなんだけど晴香を守りたいんだ。
そいつじゃない男が、もう晴香にいてベタ惚れだって思わせれば、晴香の姉さんもその男も悔しいだろうし、親にも口出しされないでここにいられる。
もし、俺と付き合うのが嫌なら落ち着いた頃に俺に愛想つかして別れた事にすればいい。」
「奏、なんでそこまでしてくれるの。」
「簡単な事だよ。俺は晴香に一目惚れしたって言っただろ。ただ、俺の方の事情で晴香の家族には俺の勤務先は、伏せて欲しい。そうだな。IT系ベンチャー企業の経営者とでも言っておくか。」
そう言って笑う奏に自分は、何がしてあげられるのか、もどかしく思う晴香だった。
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