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同居が始まり3週間。奏の提案に答えを返せないまま、明日は千晴が指定して来た日になる。
奏との生活は、晴香には心の平穏を与えてくれた。
平日は、朝食を一緒に取るが基本寝るまで会うこともない。同じベッドで眠るだけ。
休日は、買い物や散歩に付き合ってくれるだけで、男女の関係を求められることもない。
ゆっくりと弘隆に、千晴に傷つけられた心は癒されて行く。
これも全て奏のおかげだ。
あとは婚約の食事会で晴香が、どう立ち回るかを考えなければ、いけない。
「ただいま。」
金曜日とあっていつも接待や付き合いの飲み会で遅くなる奏が、珍しく午後7時過ぎに帰宅した。
「おかえりなさい。奏、早いなら言ってくれれば、ご飯作ったのに。」
「ちょっと面倒な事があって、仕事を切り上げて帰って来たんだ。」
いつもと違う不機嫌そうな奏に冷蔵庫を確認して、自分の夕ご飯のおかずだった鶏肉の甘辛煮とすぐに出来る野菜炒めと常備菜をいくつか小鉢に移し替え、味噌汁を足せば定食風にまとめられる。
「大したものはないけど、良かったら食べて。」
晴香がそう言ってテーブルに並べると奏の顔が嬉しそうだ。
「えっ、俺の分?晴香のじゃないのか。」
「私は、そんなに食べられないから。」
自分のおかずは、常備菜だけで充分だ。奏が喜んでくれるなら…
晴香の中で奏の存在がすっかり大きくなっていた。
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