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クインホテルのメインダイニング『プレーヌ・リュヌ』に到着するとすでに晴香の恋人、加納弘隆は席で待っていた。
晴香と弘隆は同じ食品会社の先輩後輩だが、普段社内で顔を合わせることは、元々ほとんどない。
営業の弘隆と総務の晴香が付き合い出したのは、たまたま本社社員の親睦旅行で、それぞれの課の幹事だった事がきっかけだ。
準備の段階で、何度となく会うことになり旅行の夜に弘隆から告白されて付き合うようになって、3年。
一人暮らしの晴香と実家の弘隆のデートは、もっぱら晴香の部屋だった。
週末は入り浸りだった弘隆が、営業一課に異動して残業や休日出勤が増えたせいで、ここのところ晴香に会いに来なかったのだが、きっとプロポーズとそのお詫びも兼ねて、こんな素敵な夜をプレゼントしてくれたんだろうと晴香のテンションは上がっていた。
「ごめんね。待った?」
「それほどでもないよ。とにかく座って。」
弘隆に促されて席に着く。
普段の2人なら、まず来ないフランス料理のフルコースとワイン、そして雰囲気にすっかり酔って饒舌になる晴香と対照的に弘隆の方は、緊張しているのか口数が少ない。
「ところで今日は、どうしてこんなディナーに来たの。」
「晴香に話があってさ。せっかくだから、美味しいもの食べてゆっくりしたいなと…」
「話って?」
「部屋を取ってあるから、行こう。」
弘隆に手を取られて、ホテルの一室に移動した。
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