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「んぎゃあー」
元気な産声をあげて、2月14日バレンタインの夜、俺たちのところにやんちゃな天使が舞い降りた。
「晴香、お疲れ様。」
大仕事を終えた晴香は、いつもよりきれいで神々しくて、女神かよって思った。
まあ、出会った時も天女か桜の精かと思ったんだから、当然か。
「奏、男の子だよ。名前、考えてくれてたんだよね?」
「ああ、俺たちの名前を繋げると『はるかかなた』になるだろ。そのイメージで宇宙って考えて、俺も父さんも漢字一文字だから宇宙の宙の字で『そら』ってどうかな。」
「宝田宙。今日からあなたは、そらくんよ。」
晴香が、横に寝かされた小さな我が子の手を指で触ると宙は、その指をかわいい手で握りしめている。
幸せそうな晴香の顔が、何か気付いたようで、少し曇った。
「あ、今日バレンタインだったんだっけ。チョコ用意していたのに、奏に渡せないわ。」
「もう、もらったよ。晴香、最高のバレンタインのプレゼント、ありがとう。」
「え?」
「宙を産んでくれてありがとう。」
おしまい
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