知らないはずの人

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「ただいま」    玄関の鍵を閉める音がして、かなたが入って来た。 「おかえりなさい。」 「ん、いい匂い。美味そうだな。」 「チーズオムレツ作ったの。」 「とりあえず食べる前に着けてくる?そのままってのも、俺としてはそそられるけど。」  渡された下着を手に一度ベッドルームに戻り、着けてからキッチンに行くとダイニングテーブルの上にオムレツの横にサラダとトースト、コーヒーが並べられていた。 「おまたせ。」 「待ってないよ。さぁ食べよ。」 「えっと、かなた。私のことよく知らないのに一緒に住もうって本気?」 「一目惚れって言ったら信じる?偶然あの店で会って、声かけて話ししたら楽しくてつい連れ帰って抱いたら、身体の相性もいい。店で飲んでいる時に一緒に住む?って聞いたのは、半分くらいは本気じゃなかったけど、今は手放したくないかな。」 「でも私もかなたの事、よく知らないよ。」 「そっか。自己紹介が必要?小林かなた。かなたは奏でるという字、一文字。仕事は、クインホテルの事業部っていうホテルの裏方。新しいホテル作ったり、改装したり、イベント企画したりしてホテル全体の集客を増やすのがメイン。」 「奏は、何歳なの?」 「26。」 「嘘、落ち着いているから、もっと上かと思った。」 「晴香は俺が老けてるって言いたいんだ?」 「そんな事言ってないよ。」  怒らせたかと慌てる晴香に奏は、軽くデコピンをした。 「そう言う晴香は、同じ年に見えないほど可愛いな。」  優しい瞳で見つめてくる奏に晴香は、照れて下を向いた。  酔っている時に自分の事をかなり話したせいか奏は、晴香のことは何も聞いてこなかった。 「ホテルで働いてるって言ったけど、土日がお休みなの?」 「基本はね。自分の企画したイベントとかだと休日出勤もあるけど、その時は平日に代休を取るよ。今だとメインダイニングのディナーフェアやっている。」  奏の言葉に食事の手が止まった。
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