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俺は意気揚々と家路についた。森を抜け、家に近づくうち、前方に赤い回転灯が見えた。一台の覆面パトカーが家の前に停まっている。俺に気づいて男が二人降りてきた。刑事だろう。彼らは俺が近づくのを待ってから、
「荒木正行さんですね?」
一人の刑事が俺に尋ねた。そうだと答えると、
「岡野信二さん、ご存知ですね?」
それは友人の名だ。木こりを辞めると言った。
「知ってます。彼がどうかしたんですか?」
「殺されました。強盗かと思われます。自宅に保管していた現金を奪われていました」
「岡野さんが生前、最後にこちらに立ち寄ったようなのでお話を……」
もう一人の刑事が話している途中で口を噤み、相棒に耳打ちをする。二人の視線は俺が持つ錆びた斧に向けられていた。
「荒木さん、その斧、ちょっと拝借できますか」
断る理由もないのでそれを手渡すと、
「岡野さんですがね、実は、斧のようなもので頭を割られて死んでいたんですよ」
斧の汚れを指差し、何事か囁きあううち、刑事たちの視線が厳しくなった。
「失礼ですが、そちらのカバンの中身、拝見してもよろしいですか?」
言葉遣いは丁寧だが、それは見せろということだ。
嫌な予感を覚えながら手渡す。その中味を確認して二人の刑事は顔を見合わせた。
「荒木さん、すみませんが署までご同行願えますか」
果たして、警察で女神の話をしても信じてもらえるだろうか。
どうやら欲を出した俺にも、女神は罰を与えたようだ。
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