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「ああ、無くしたと思ったお客さんが同じようなキーホルダーを買ったんだな」
私はそう思って、やれやれとキーホルダーを拾い上げ、落とし物ボックスへと仕舞った。ここにあるんだけどな……。私は何となくお客さんが気の毒に思えた。だがまたしばらくして、似たようなキーホルダーが駅のトイレで見つかった。
3つを並べてみると、呪術でつかう骨の装飾のように見えた。宗教関係の方か、あるいはその類のファッションが好きな方だろうか。私は改札でお客さんを注意深く観察することにした。このキーホルダーを落としそうな人を探してみる。
しかし、どれだけ探しても目ぼしい人は見当たらない。それなのにキーホルダーの落とし物だけは毎週のように増えていった。小物用の落とし物ボックスはいっぱいになり、いつからかキーホルダー専用の落とし物ボックスを作らなければならなくなった。
「ここまで多いとなると、もしかしたらわざと落としているのではないか……」
さすがに業を煮やした私は、終電間際の見回りを強化して落とし主を探そうと考えた。するとある晩、50前後の黒い服を着た女性が、電車の座席に白いキーホルダーを忘れていくのを見た。
「すみません、お客様」
私はすぐに女性に話しかけた。
「はあ?」
女性は怪訝そうな顔をした。髪はぼさぼさで、ほうれい線が目立つ。
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