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夢
新年度になり、僕は持ち上がりで三年生の担任になった。
この学年は四クラスなので、単純に考えると二年四組から四分の一の生徒をそのまま担任することになる。
茜は、引き続き僕のクラスの一人となった。
「また、太田先生と一緒かぁ……」
眉間にしわを寄せた茜が、廊下で会った僕にそうつぶやいた。
「我慢してくれ。先生が決めたんじゃないからな」
「ぶーっ!」
口を尖らせながら、不満を存分にアピールしてくる。
そんなやり取りをしながら、教室の前まで来た。
教室に着いたことに気付いた茜は、僕より一歩先に中へ入りながら、
「嫌じゃ、ないよ、先生」
と笑って、自分の席へ走って行った。
*
父親が東京へ単身赴任しているため、茜は母親と大学生の姉と三人で暮らしている。
親が単身赴任している家庭は珍しくないが、学校での様子や僕との接し方を見ていると、やはり寂しさを抱えているように感じられた。
茜の成績は二年生後半から伸び続け、どの教科も八十点前後をしっかり取れるようになった。
その中でも、国語は九十点台を取れるほどになり、得意教科となっていた。
これは、本人の努力の賜物だった。
吹奏楽部を中心とした彼女の良好な交友関係もあり、音楽の道に進みたいという夢を抱いて充実した日々を送っていた。
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