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テレビもラジオもそのニュース一色だった。
新幹線を降り、家に帰るために仙台駅で乗り換えた電車が、踏切内で動けなくなった大型トラックに衝突したのだ。
茜は先頭車両に乗っていて、意識が戻らないまま病院に搬送された、そう母親から教えられた。
事故は起こらないほうがいい。もちろんだ。
しかし、世界でも日本でも事故は起きてしまう。どんなに細心の注意を払っても、その網を擦り抜けて、いつかどこかで。
それがなぜ、今日で、しかも茜なのか。
*
教頭先生が学校に残り、僕は茜の母親に教えてもらった病院へ向かう準備をした。
茜の母親も、渋滞に巻き込まれてまだ辿り着いていなかった。
「太田先生、気を付けて」
職員玄関で靴を履いている僕に、教頭先生がそう声をかけてくれた。
「はい、行ってきます」
「気を付けて」という言葉が無意味なものに思えた。
相手を気遣う言葉のはずなのに、今の僕には傷口をさらにえぐる響きを持っていた。
事故は、自分が起こさなくても、巻き込まれることがある。
そう、今日の茜のように。
そう言えば、茜が東京に行く話をしてきた時、僕は気持ちを込めて「気を付けて」と言ってあげただろうか。
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