この夜、僕は生かされた。

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 僕が担当している国語のテストは二時間目だった。  職員室で温めのお茶を飲み、テストが始まって十分ほど過ぎたあたりから、各教室へ質問がないか見回りに出た。  机の間を回りながら、前回高得点を取った生徒や平均点ぐらいの生徒の答えを見る。  すると、テストの難易度や生徒たちの理解度が何となく分かってくる。  今回も、平均が六十点台になりそうな感じで、ほっとしながら自分のクラスへと移動した。  僕が担任している二年四組は、授業と休み時間のメリハリを意識できる生徒が多く、集中して話を聞くことができている。  前回のテストでは、国語の平均点が学年で一番高く、担任としてはうれしい限りだった。  後ろの扉からそーっと教室に入り、生徒たちの気が散らないように注意しながら見て回った。  僕に気付いた茜が左手の親指を立ててにこっと笑う。  自信ありげなその態度に乗って、僕はゆっくりと側へ行き解答用紙を眺めた。  茜の前回の点数は、平均点より少し上の六十五点ぐらいだっただろうか。  そんなことを思い出しながら、記述式の答えを見てみると、丁寧な字で文句のつけようもない、まさに僕が授業で教えたとおりのきれいな模範解答がそこにあった。  僕は大げさに眉を上げて瞬きをした。  茜は、中学生とは思えない無邪気な笑顔で、そして舌を出した。  振り返って窓の外に目を落とすと、校庭の木々が鈍い陽の光を浴びて優しく立っていた。
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