この夜、僕は生かされた。

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 テストがすべて終了し、帰りの会をするために教室へ入った。  生徒たちは、テストの出来や自信のなかった問題の答えを確認し合っていた。  僕に気付いた何人かの生徒が、答えを早く知りたくて質問にやって来た。  素直に教えたり、はぐらかしたりしながらやり過ごし、帰りの会を早く始めるよう日直に告げた。 「さようなら」  挨拶を終え、日直から学級日誌を受け取り廊下へ出ようとすると、茜に呼び止められた。 「先生、テストは明日返すの?」  期待と不安の入り混じった様子で、茜は尋ねてきた。  普段は我先に話し始めるのに、こういう真面目なことはみんなの前では言わないのが彼女だ。きっと今回のテストに手応えがあったのだろう。 「どうしようかな……、今日から部活も再開されるし。まあ、何とか頑張ってみるよ」  国語は他の教科と違い、採点作業がなかなか進まない。  記述式の答えの部分点をどうするか、全員の解答を眺めてみる必要があるからだ。  もちろん早く返してあげたいが、四クラス担当しているので、「絶対明日返す」と簡単には約束できない。 「私も手伝うからさ。お願い、明日!」  そう言って、茜は顔の前で両手を合わせて頭を下げる。  私も手伝う、はさすがにないだろうと思いながら、 「分かった、頑張ってみる……ということで、そっちは部活頑張って来い!」 と、背中を押して茜を廊下へ向かわせた。  廊下には茜と同じ吹奏楽部の友達が二人待っていた。  三人で廊下を歩き始めて、振り返った茜が、 「太田先生、徹夜しちゃだめだよーっ」 と、自分の目の下を触りながら叫んだ。
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