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八時半を過ぎたころ、坂本先生の丸付けは終了した。
ふーっと息を吐き、坂本先生は、
「まずまずね」
と今回のテストの結果を評価した。
「じゃあ、先に帰るわね」
「お子さんたちは、何か食べてるんですか?」
「今日は丸付けがあるから、旦那に夕食を頼んだのよ」
「旦那さん、料理も得意なんですか?」
「うちの旦那、パーフェクトだから」
「パ」をわざと強調して、坂本先生は首を軽く振りながら笑った。
「太田先生も早くいい人見つけなさいよ。ちゃんと食べてね」
そう言って、机の引き出しから飴やらクッキーやらをごそっと掴んでは僕の机に置き、
「お先します。頑張ってね」
と帰って行った。
熱いお茶を飲む休憩を挟みながら、一組から始めた丸付けは、十時半を過ぎてついに四組まで来た。
自分のクラスということもあり、もらったお菓子を口に入れて、もう一度切れかかった集中力を奮い立たせた。
三組までの丸付けで、生徒たちの記述式の解答パターンもほぼ出揃い、思ったよりも悩まずに進めることができた。
どの生徒も前回より理解度が上がっていて、赤ペンは踊るように円を描いた。
残り数枚というところで、「石川茜」という名前を見つけた。
窓側の席まで来たな、もう少しだ。
茜の解答用紙は、彼女の頑張りが本当に伝わって来るものだった。
語句の意味も、例文作りも、三十字以内で理由を述べる解答も、しっかり授業を聞いて、復習してきたことが分かる非の打ちどころのない答えだった。
八十八点。
前回から二十点以上伸びている。
他の生徒たちも、授業で学んだことを何とか答えようという姿勢が見え、学年平均は前回より四点ほど上がっていた。
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