16歳3か月

10/13
前へ
/85ページ
次へ
「間違ってたらごめんね。霧島くんって、もしかして経堂に住んでる?」 「いえ、いまは成城ッス。でも小学生まで経堂に住んでいました」 洋平が顔を強ばらせたのがわかった 「もしかして、お母さんの名前は霧島美央…さん?」 「あ、はい。え?うちの母のこと知ってるんスか?」 「え?そーなんスか?」 「知らなかった」 松山と成は、素直に驚いている 一番驚いたのは、尋ねた洋平自身だった ずっと虚空に宙ぶらりんのままだった謎が、いま、細い糸を伝って目の前に降りてきた気がした 16年、忘れかけていたのに 自分でも、なぜあの時のことがこんなに気になるのか、わからなかった 別の後遺症かな 洋平の口許が緩んだ 「…いや、お会いしたことはないんだよ。名前だけね」 「あー、料理本とかに時々出てるから、それスかね?」 成は横目でずっと真仁を見ていた 本当の真仁は、こんなに素直であどけない 成はそれを知っている だから好きになった 恋愛が絡まなければ、真仁は成が好きな真仁でいてくれる だから成には踏み出せない 好きな真仁が壊れてしまうかもしれないから 好かれてなくはないと思うが、おそらく恋愛のソレじゃないことは、成にもわかっていた だから見せてくれる素顔 (ジレンマだあ) 成は急に涙が溢れてきそうになって、ぐっとこらえた
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加