16歳3か月

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お風呂に入って部屋に戻ると、真仁は今日3人で作ったグループラインにメッセージを送った 珍しくGWに休みを取れた父親が、久々にキャンプに行こうと言うので、部活の半日練習のあと遊べなくなったことを告げた すぐに既読がつき、続けざまに【了解】のスタンプが届いた naru【どこ行くの?】 マサヒト【近場で千葉。1日部活休むことになるわ】 naru【いいな~】 まつれん【お土産よろしく!】 スマホを放り投げて、ベッドに横になり、美央から借りた母子手帳を開いた びっしりと小さい字で、真仁の成長の記録が書かれている 真仁はページを遡って妊娠時の記録も読んでみた 【お腹蹴る】 【性別不明】 【男の子がいいな】 思わず笑みがこぼれた さらに遡る 【夜つわりひどい】 【口にできるもの→野菜スティック、フライドポテト、トマト、アイス】 【ダメなもの→ご飯、お茶の臭い、香水・芳香剤の臭い】 母親になるって大変だな、と素直に感じた その時、ある違和感に気づいた 真仁は、妊娠中の記録と、出産後の記録を見比べた ――字が違う―― 真仁は起き上がって、改めて文字を見比べた 出産後の文字は見覚えがあった 料理教室の黒板に書かれたメニューの文字と同じ、美央の文字だ しかし、妊娠中の記録の文字はあきらかにそれとは違う 表紙に書かれている名前も、母親の字ではない どちらも上手だと思うが、母親の字が丸みを帯びていて可愛らしいのに対し、もう一方の字は止めや払いがしっかりしていて力強く、大人っぽい (確信した。俺は父さんの子でもなければ、母さんの子ですらない) 真仁は母子手帳を握りしめた
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