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16歳4か月
真仁は、GW明けてすぐに、区役所に戸籍謄本を取りに行った
記載は“長男”
婚姻後に産まれた実子ということになるそうだ
少なくとも戸籍上は、真仁は両親の子供で間違いないようだ
その場合、一番考えられるのが、父親違い――
なんらかの理由で、母が別の男性との間に子供ができ、おそらくそれを父親に隠して出産した場合
が、母子手帳のことが、どうしても気になった
母親に、字の違いについてさりげなく聞いてみたが
「そう?」
と流されるだけだった
何もできないまま時が過ぎていく
5月末に、富士山の麓にある学校の研修施設行われる野外活動研修の班わけに、真仁はそんなモヤモヤした気持ちを抱えて臨んだ
その日のHRは、野外研修の班わけだった
すぐに成と松山に視線を送った
二人も笑顔でうなずき返す
あとのメンバーだが、女子は成に任せるとして、男バレで誰か―
その時目についたのが、窓際の一番後ろに座る高塚だった
高塚は中等部からの持ち上がりのはずだが、帰宅部で、クラスメイトとつるんでる姿をあまり見たことがない
ただ、真仁は高塚の姿勢のよさと指の長さがずっと気になっていた
すぐさま机の下でラインを打つ
マサヒト【なあ、高塚誘ってもいい?】
naru【私あんまり話したことないけど、向こうがよければ】
まつれん【誰でもOK笑 女子は誰にする?】
マサヒト【成の仲のいいやつでいいよな】
まつれん【意義なし。あ、でもできればかわいいこでオナシャス!】
naru【高塚くん誘うとなると、バレー部で固めるのも微妙だから別のこ誘ってみるね】
周りのクラスメイトも、委員長の話はそっちのけで、机の下でラインを打っている
いざ、班決めの段階になったときに、取り残されたり、ひとりぼっちにならないように、皆、ギリギリまで情報戦を繰り広げているのだ
やっていないのは数人であるが、着心地悪そうにそわそわしている
しかし、当の高塚はどこ吹く風で、窓の外を眺めていた
高塚のラインは知らないから、実際の班決めの段階になったら真っ先に声をかけてみよう、と真仁は思った
「はい、じゃあ班決めしてください」
真仁が立つと、すぐに何人かの男女が集まってきて、一緒の班になろうと誘った
成は、女バレのメンバーに「霧島くん誘って同じ班になろうよ」と言われ、戸惑った
断りたいが、結果的に自分だけ真仁と同じ班になったら、何を言われるかわからないと思ったからだ
その時、
「高塚OKだって。あと、女子がもし決まってないなら、1年で同じクラスだった子誘いたいみたいなんだけど、成はそれでいい?」と真仁と松山が割って入った
女バレのメンバーはおもしろく無さそうだったが、「成、班決めてたんだ。じゃあね」と言って引き下がっていった
成は瞬時にまずった、と思った
成からしたら、いくら好きな相手と組めるとはいえ、こういう軋轢が生まれるならば、くじ引きにでもしてくれた方がマシだ、と思った
しかし、ここまで来てしまったからには引き下がれない
好きな人と同じ班になれたんだから、思いっきり楽しもう、と思った
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