16歳4か月

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成は、中等部からの持ち上がりで、仲がいい南條茉里を誘った 南條は陸上部の花形だ 陸上部のメンバーから誘われていたが、人数が多すぎて誰が抜けるかもめていたので、引き抜く形になった そして、高塚が指名した女子は、大塚夢という、高塚と同じ帰宅部の、真仁とは別の意味で【目立つ】存在の女子だった 「なあ、大丈夫かよ。乗っ取られたりしねえ?」 松山がおびえて言った 「たかが課外研修で乗っ取りも何もないでしょ」 成が苦笑いした しかし、松山がそう言うのもわかる気がした 何せ夢は、高い偏差値が求められる高等部からの入学組のわりに、ファッションやメイクはもちろん、耳に何個ものピアスを開けたパンク系女子だった そのため、入学当初から校内でも浮いている存在だった でもそれは決して悪いことではない、と成は思っていた 非難すべきは服装や髪型に規程がない校則であり、校則で許されている限り、自己表現は自由であるべきだからだ 特に大きな問題もなく班決めが終わり、各々まとまって座った これから班ごとに係決めや、2日目の炊飯活動のメニュー、オリエンテーリング時のルートなどを決める 「まずは自己紹介しない?」と成が切り出した みんなうなずく 「じゃあ、俺から。霧島真仁、バレー部。中等部からの持ち上がりで、小室、松山、南條さんはよく知ってる。高塚、大塚、よろしくな」 高塚と夢がうなずいた 「俺は松山蓮。こいつと同じバレー部な。よろしく」 「わたしは小室成。万年ベンチだけど、女バレだよ」 成の自己紹介で、夢の顔が緩んだような気がした 「南條茉里です。陸上部です。成とは中等部から仲いいの。大塚さん、女子メンバーはこの3人だから助け合おうね」 夢はうなずくと 「大塚夢です。帰宅部だけど、高塚くんと中学の頃からバンドやってます」 高塚を除く4人が身を乗り出した 「え?!高塚くんと大塚さん、バンドやってるの?!」 「すげえ」 「え??楽器何?!」 4人の反応に、高塚と大塚は意外な顔をして 「え、俺はキーボードで、夢はギターボーカル…」 「まじで?!大塚さん、かっこいい!」 成と茉里がキャーキャー言い合っていると、 「B班、私語厳禁な!一応授業だぞー」 担任の葉山から注意を受け、声を落とした 真仁も、二人の意外なバックグラウンドに感心し、高塚の姿勢のよさと、指の美しさはそれだったかと、合点がいった 松山の懸念は杞憂に終わりそうだ 「高塚孝太郎。小さい頃からピアノやってて、中学でバンド始めました。正直霧島から誘われると思ってなかったからびっくりしたんだけど…」 「同じクラスになった時から話してみたいと思ってたんだよね。姿勢がいいし、雰囲気違うっていうか…でも納得した」 学校以外に社会を持ち、何かに打ち込んでる人間のオーラはやはりどこか違う 真仁はそういう人間に憧れているから、高塚が気になったのだと思った
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