16歳3か月

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「面白いことになってるぞ!」 陸上部のメンバー数人が、体育館に飛び込んできた 『マジマジ、丸瀬と霧島がチワってんの!丸瀬のブチギレ具合が半端ないから!早く行こうぜ!』 よりによって現場は、本校舎から体育館がある別棟に向かう1階の渡り廊下で、グラウンドからも丸見えのところだ ましてや、その渦中にいる人物は、男子バレー部の部員だ 女子バレー部には、真仁に好意を寄せている者も多い わらわらと体育館から生徒たちがあふれでてきた 成も、怖いもの見たさで後からついていった 人だかりの後ろの方から様子を伺う 「何?何?全然わかんない」 「26組の霧島と24組の丸瀬だって」 「え?!修羅場じゃん」 人だかりの隙間から、棒立ちしている真仁の横顔が見えた 声が聞きたいが、周りのざわめきにかき消されて聞こえない 中には 「やった!別れちゃえ!」 「あんた霧島先輩狙ってたっけ?」 「丸瀬先輩がいなくなればアリでしょ!」 と言う会話も聞こえた アリ…なのかな あれを見てもそう言えるなら、みんなどれだけハートが強いんだろう 成は心臓が痛くなった ずっと好きだった、ずっと 中2で、初めて同じクラスになったときから だから、例え両思いになれたとしても、別れるときにこんなに否定されるなら、両思いになんてなりたくない 「霧島くん振るとか、さすが丸瀬さんだよね~うちらにゃ雲の上の話だわ」 部室から出てきた文化部の女子たちの話し声も聞こえた (真仁が振られてる?違うでしょ、あれは) 隙間からだがはっきり分かる 真仁には、陽依の罵声など届いていない はなからどうでもいいのが見え見えで、むしろ顔を赤くして真仁を罵る陽依を見ているのが辛い 成は野次馬から抜け出して体育館に戻った 成が戻ってしばらくすると、少しずつ生徒たちが戻ってきた 騒動が終わったのだろう 男子バレー部の部員たちに囲まれて、真仁もやってきた 「教えろって!」 「で?別れたの?別れたの?」 部員たちが、よってたかって、真仁をからかっている 「うるせえなあ。コモン呼ぶぞ!」 真仁が部員たちを追い払った 部室に向かうのか、体育館の端を歩いてきたところで、スポーツドリンクを飲んでいた成と目が合う 「来たんだ」 「おう」 真仁はぶっきらぼうに言うと、部室に入っていった 成は入れ替わるかのように、コートに戻っていった
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