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厨房は、カウンター越しに店内を見渡せるようになっている
店を作るときに、成の父親であり、店主の洋平がこだわったところだ
洋平は、仕事の手を休めることはなかったが、意識は成のテーブルに向けられていた
自分の娘、というより、成の友達として紹介された霧島君
確か奥の席に座ってる子だ
「どっちが成の彼氏かしらね?」
妻の恵理子が、後ろでドリンクを作りながらささやいた
「彼氏じゃないだろ」
「奥の席のこ、霧島くんなんて、かっこいいじゃない」
「成のタイプじゃないだろ」
「そんなことないでしょ。背が高くて、若い頃のあなたに似てる」
そうだろうか
「俺はもっとがっしりしてたぞ」
「そう?」
妻の恵理子は高校の時の同級生だ
高校卒業目前で一度別れたが、成人式で再会し、26歳で結婚した
成は洋平が28歳の時にできた子供だ
妻が成を妊娠してるときは、どんな罰かと思うほど色んなことがあった
刑事として脂が乗っていた、と自分でも思っていただけに、厳しい現実を突きつけられた
結果的に、長く警察を続けられなくなり、実家の家業でもあったお好み焼き屋を始めたのだが、意外と商才があったのか、運が良かったのか、今ではこのお店に加え、都内に飲食店を数店舗経営するほどになった
あの時のことは、今でもよく覚えている
自分の人生のターニングポイントになった出来事だからーー
松山は、お好み焼きを焼き終えると、成の指導でもんじゃ焼きも作り始めた
真仁は食べる専門だ
「お前と来ると楽できていいな」
「だろだろ~俺、こういうのやりたい派」
「俺はパス」
「私も」
「成はやれ」
今まで3人でご飯など食べたことなかったが、気楽で楽しい、と真仁は思っていた
学校や、部活や、彼女の前では、かっこつけているのは自分でもわかっていた
陽依のことがあって、いまは取り繕うのがしんどかった
こんなことなら、もっと早くからこの二人とつるんでいればよかったと思う
真仁は、高校という貴重で特殊な時間を、少し無駄にしすぎてきたと感じた
「そういえばお前は結局何型だったの?」
松山が真仁に聞いた
「Oだった」
「ふーん。親父さんとお袋さんは?」
「親父がBで、お袋がOだって」
「じゃあ、親父さんはBOってことか」
松山は中学の時に、血液型について習って以降、どういう組み合わせなのか、勝手に考えてしまうようになったという
「怖いよな~俺、中学でやるまで知らなかったもんな。実は親の子じゃない可能性も、血液型聞いたらわかっちゃうこともあるんだもんな」
「例えば?」
「意外なところだと、親がAとBでもOが産まれたり、親がAとOでも、絶対Oが産まれないパターンもあるわけだろ?」
松山はAOのバターンと、AAのパターンについて話した
「じいさんやばあさんにまで遡って、下手したらその上までいかなきゃわかんないんだもんな」
「あとは兄弟で別の血液型が出ればわかるよね、うちみたいに」
真仁は二人の会話を黙って聞いていたが、
「もし、血液型でもわからなかった場合って、他に知る方法ってあるのかな?」
「何を?」
松山と成が声を合わせて聞いた
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