16歳3か月

8/13
前へ
/85ページ
次へ
厨房は、カウンター越しに店内を見渡せるようになっている 店を作るときに、成の父親であり、店主の洋平がこだわったところだ 洋平は、仕事の手を休めることはなかったが、意識は成のテーブルに向けられていた 自分の娘、というより、成の友達として紹介された霧島君 確か奥の席に座ってる子だ 「どっちが成の彼氏かしらね?」 妻の恵理子が、後ろでドリンクを作りながらささやいた 「彼氏じゃないだろ」 「奥の席のこ、霧島くんなんて、かっこいいじゃない」 「成のタイプじゃないだろ」 「そんなことないでしょ。背が高くて、若い頃のあなたに似てる」 そうだろうか 「俺はもっとがっしりしてたぞ」 「そう?」 妻の恵理子は高校の時の同級生だ 高校卒業目前で一度別れたが、成人式で再会し、26歳で結婚した 成は洋平が28歳の時にできた子供だ 妻が成を妊娠してるときは、どんな罰かと思うほど色んなことがあった 刑事として脂が乗っていた、と自分でも思っていただけに、厳しい現実を突きつけられた 結果的に、長く警察を続けられなくなり、実家の家業でもあったお好み焼き屋を始めたのだが、意外と商才があったのか、運が良かったのか、今ではこのお店に加え、都内に飲食店を数店舗経営するほどになった あの時のことは、今でもよく覚えている 自分の人生のターニングポイントになった出来事だからーー 松山は、お好み焼きを焼き終えると、成の指導でもんじゃ焼きも作り始めた 真仁は食べる専門だ 「お前と来ると楽できていいな」 「だろだろ~俺、こういうのやりたい派」 「俺はパス」 「私も」 「成はやれ」 今まで3人でご飯など食べたことなかったが、気楽で楽しい、と真仁は思っていた 学校や、部活や、彼女の前では、かっこつけているのは自分でもわかっていた 陽依のことがあって、いまは取り繕うのがしんどかった こんなことなら、もっと早くからこの二人とつるんでいればよかったと思う 真仁は、高校という貴重で特殊な時間を、少し無駄にしすぎてきたと感じた 「そういえばお前は結局何型だったの?」 松山が真仁に聞いた 「Oだった」 「ふーん。親父さんとお袋さんは?」 「親父がBで、お袋がOだって」 「じゃあ、親父さんはBOってことか」 松山は中学の時に、血液型について習って以降、どういう組み合わせなのか、勝手に考えてしまうようになったという 「怖いよな~俺、中学でやるまで知らなかったもんな。実は親の子じゃない可能性も、血液型聞いたらわかっちゃうこともあるんだもんな」 「例えば?」 「意外なところだと、親がAとBでもOが産まれたり、親がAとOでも、絶対Oが産まれないパターンもあるわけだろ?」 松山はAOのバターンと、AAのパターンについて話した 「じいさんやばあさんにまで遡って、下手したらその上までいかなきゃわかんないんだもんな」 「あとは兄弟で別の血液型が出ればわかるよね、うちみたいに」 真仁は二人の会話を黙って聞いていたが、 「もし、血液型でもわからなかった場合って、他に知る方法ってあるのかな?」 「何を?」 松山と成が声を合わせて聞いた
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加