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「子供が親の子供じゃない証明」
「逆じゃなくて?」
成がすかさず聞いた
地頭がいいのだろう。受け答えへの反反応がいい
「ドラマとかでは、戸籍がどうとか言ってるときあるけどな」
松山が言った
「戸籍謄本?」
成が聞いた
「それかな?養子とか書いてあるやつ…」
成は相槌を打ちながら
「あとはDNA検査じゃない?一番確実でしょ」
「だな」
DNA検査はお金がかかりそうだから保留にして、戸籍謄本は現実的だ
すると成が、
「母子手帳とかは?ほら、中学の時に、新生児訪問?みたいの行ったじゃん。その時、前もって授業で育児のこと勉強してさ、班の一人が母子手帳を親に借りてくるってあったじゃん?うちは深沢ちゃんが持ってきてくれたんだけど、養子だったら、それに何か書いてあるんじゃない?」
そういえば、そんなこともあった
真仁はお好み焼きをつついた
もんじゃ焼きもでき上がりつつある
だが、真仁の箸は進まなかった
成と松山は、真仁の食が進んでいないことに気がついていないのか、二人でほとんど食べてしまっていた
真仁に残されたのは、鉄板の上の6分の1切れだけだった
「でも父親が違う場合って、そういうのには残らないよなーてか、隠すよな。それが一番確率高そう、で、怖い」
松山がぶるぶる震えるマネをした
「確かに」
成がうなずいた
その時、何かを思い付いたように
「それか普通に親に聞くのは?少なくとも母親は、自分の子供かそうじゃないかは絶対知ってるし、父親が違ったとしても、母親だけは知ってるはずじゃん」
シンプルだけど、目からうろこだった
母親に聞く?
『俺は本当に親父とお袋の子供ですか?』って?
そんなことを聞いて、もし母親が思っていたのとは違う反応をしたらどうするんだ?
一番シンプルなのに盲点だったのは、怖くて絶対できないから、端から除外していたためだ
3人は店を出た
成は、店の脇にある階段を上って、2階と3階にある自宅に帰ることになる
成の母親は忙しそうで、代わりに厨房から成の父親が顔を出した
「ごちそうさんッス」
真仁と松山は揃って頭を下げた
挨拶も部活で仕込まれている
「これから家で夕飯だろ?お腹大丈夫?」
「余裕ッス!」
松山が人懐こく笑い、胸を張った
真仁も隣でうなずく
それにしても―
成の父親から、何か言いたげな気配を感じるのは気のせいだろうか
真仁は思った
時々、厨房から様子を窺っているのがわかった
それだけなら、娘が連れてきた友達が、娘とどういう関係なのか気にしてるだけとも言えるが、真仁と何度も目があい、その都度、我に返ったかのようにいそいそと仕事に戻る姿が気になった
「あの…俺の顔になんかついてますか?」
真仁は思い切って聞いてみた
あー、と父親は頭を掻いた
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