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16歳3か月
LHRで配られた紙は、来週学校に来る献血車のお知らせだった
16歳から200mlの提供が可能なこと
O型とA型が不足していること
男性は体重が45キロ以上からできること
「なあ、これって、血液型わからなくてもできるもん?」
真仁は、お知らせを回すついでに、後ろの席に座る成に聞いた
男子のような名前だが、女子である
中等部からの持ち上がり組で、名字の並びが近いため、同じクラスになると大抵席が前と後ろになるのだ
名前のシンプルさに合わせたように、性格もサバサバしていて論理的、話しやすいから真仁だけでなく、男子の友達も多い
「いま配られたばかりなんだけど…先生に聞いたら?」
「霧島、何か質問あるか?」
二人の声に反応して、担任の葉山が声をかけた
「これって、血液型わからなくてもできますか?」
「なんだ、お前血液型わからないのか?」
担任の葉山が頭をかいた
「先生!私もわかりません」
「俺もー」
思いのほか知らない生徒が多いことに驚いた葉山のリアクションに、笑いが起きた
「えー、最後のQ&Aにも書いてある通り、血液型がわからなくても…できます。なんなら調べてもらえます。献血興味ない人も、血液型を調べてもらうつもりで参加してみてな。ちなみにその間は授業抜けられるぞ」
生徒たちから歓声が上がった
「といってもすぐに帰ってきてもらうからなー。サボったらわかるから。それじゃあ委員長に代わります」
葉山に替わってクラス委員の二人が壇上に上がり、5月末に行われる課外研修の班決めの話に移った
このクラスになって、まだ2週間足らずだが、1年時からの知り合いや部活のメンバーが多く、すっかり緊張はとけている
そもそも、基本的には緊張や人見知りとは無縁の性格だ
「なあ、お前本当に血液型わからないの?」
放課後、クラスメートで部活も同じ松山が話しかけてきた
「普通知ってるもんなの?」
「わたしはA」
成が後ろから参加してきた
帰り支度を済ませ、いままさに鞄を手に席を立つところだった
「俺はB!」
成と真仁のあ~という反応に、松山が「世間はなぜかBに冷たいよな」と愚痴る
「俺、聞いたことないんだよね。親からも特にそういう話ないし。みんなどういうきっかけで聞くもんなの?」
「きっかけとかないよー。昔から知ってた」
「ふーん…」
真仁はバッグを肩に掛けた
「真仁!」
教室のドアから恋人の陽依が顔を出した
陽依とは高校一年生の秋から付き合っている
「何?部活行かないの?」
松山と成が真仁の背中に声をかけた
「疲れたから帰る」
真仁は二人に手を振って教室を出た
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