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プロローグ
激しい雨が打ち付けるどんよりとした空が印象的だった。その空は、自分の心を表しているかのようで。呆然と、涙すら出ない自分の代わりにこんなにも泣いてくれているのではないかと、思うほどに。
そんな降りしきる雨の中、まるで雨なんて降っていないかのように佇むその少年が、まるで――。
「こんな所で、なにしてるんだ?」
だから、声をかけずにはいられなかった。心許なく、儚げで、今にも消えそうだったその子を、引き止めるように、消えていかないようにと。
振り向いた少年の表情はどこか全てを諦めたような、仄暗さを孕んでいて。
「俺んとこ来る?」
思わず掛けた言葉にその少年の瞳に微かだけど光が灯った。その光が消えないよう陰らないようにと伸ばしたその手を、彼は恐る恐るととってくれた。
その日から十年。その少年は今も、俺の側にいる。
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