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 買い物から帰ってきた郁人がテキパキと料理を始めるのをソファに座って時折チラチラと眺めながらバラエティ番組を流し見していた。  料理をする後ろ姿は、顔を見なくてもとても楽しそうだ。郁人は何が楽しくてここに入り浸ってるんだろう。あれこれと理由をつけて追い返そうとしても言う事を聞かないくらいには、ここを気に入ってはくれているんだろうけども。 「あ、俺、明日はバイトだから来れない」 「わかった。てか、来るのが当たり前みたいに言うな」 「えー、なにも言わずに来なかったら寂しいでしょ?」 「アホ」  ケラケラと楽しげな笑い声。郁人が楽しいのなら、いいか。結局はその答えに辿りつくのだ。  児童養護施設で暮らす郁人。郁人には俺にはわからない寂しさとか、苦しみとか、辛さとかがあるのかもしれない。俺には話さないそれらのこと。話さなくても、それでもいいから、俺の側にいる時くらいは全部忘れて、楽しい事だけ考えられたらいい。そんな風には思ってる。  少しでも、甘えられるように。気を許しあえるように、何でも言い合える仲に。郁人が望む俺でいたい。兄としてなのか、父親としてなのか。むしろそんなのは烏滸がましいのかもしれないが。 「勉強もちゃんとやれよ。成績落ちたらバイトやめないといけないだろ」 「うん。ご飯食べたらここでしていい?」 「どうぞ」  出来上がった冷やし中華を運び、テーブルに並べる。しっかり肉も乗っかってる彩り鮮やかな冷やし中華だ。
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