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 なにがそんなにいやだったのか。結局落ち着いて目を覚ました郁人にも聞くことはできず、目を覚ましてからは、そんな事を言う事もなかったため俺が触れていい話ではないだろうと自然と接した。  全のうちの子になる。  後にも先にも、その言葉はその一回きりだった。もしあの時、俺がじゃあうちの子になりな、とでもいえば、郁人はどうしたのだろうか。  施設にはその後一度だけ、郁人のその後の様子を訪ねたが、落ち着いているが、一度だけ里親になりたい夫婦との面会が組まれかけたことがあるらしいが、頑なに嫌がり会う事も拒んだので立ち消えたのだと知らされた。  郁人の事情は聞いていない。俺が聞くべきことじゃないと思ったし、そんな事を知らなくても問題はないだろうと思った。  だから、憶測でしかないが、郁人はあの場所で、本当の両親が迎えに来るのを待っているのだろうかと思ったものだった。  しかし、高校生になった今でも郁人はそこで暮らしている。今でもまだ、待っているのだろうか。それとももし、今里親になりたいという人が現れれば、今度は会うくらいはするだろうか。  そんなことを考えていると、チャイムの音が鳴り響く。案の定ずいぶんと早く来たものだと起き上ると、寝間着にしているTシャツと短パン姿で玄関に向かった。
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