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「いただきます」  手を合わせてそう言うと、郁人も同じように手を合わせる。一口かじるとウインナーはできたてで温かく、キャベツにもちゃんと味付けがされていて美味い。 「うま」 「ほんと? 嬉しい。もっと凝ったのも作りたいんだけど」 「別に、美味けりゃなんでもいい」 「ほんと、全ってそういうとこずぼらだよね」 「なんでもいいとは言ってないぞ。美味くないと」 「ハハッ、そうだよね」  郁人は楽しそうだ。そのことに今日もホッとする。少しだけ、踏み込んでみてもいいだろうか。 「郁さ。昔、俺んちの子になりたいって言ってたの覚えてるか?」  夢の話。夢を見て思い出したあの時の事を切り出してみる。郁人の表情がピクリと動き、すぐさま取り繕うように笑顔になったのを見逃さなかった。 「そんな事、言ったっけ?」 「言ったよ。忘れたのか」 「子どもの時の事でしょ」  いつの間に、そんな風に誤魔化すのがうまくなったんだ。取り繕ってなんでもない風に見せているだけだって、長年一緒にいる俺にはわかってしまう。  でも、踏み込んだ手前、ここで止められなかった。
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