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「それで、凹んでんだ」
ケラケラと楽しげに笑いながら、郁人を送り届けたその足で、真壁が一人で飲んでいるという居酒屋にやってきた俺は、真壁に今朝の出来事を話しながらグイッとビールを煽る。
「別に、凹んでるわけじゃ・・・・・・」
「どこがだよ。べっこべこじゃねぇの」
郁人の前では平然としてたんだから上等だろう。まさかこんなにもショックを受けることになるなんて思わなかった。俺にとって郁人は、本当に家族同然、弟みたいな感じだったんだ。でも、郁人にとってはそうじゃない、そう突きつけられた。
「思い上がりすぎてたんだよな。懐かれてすっかりいい気になってたっつーか。郁にとっては、俺のところは逃げ場みたいなもんだったのかも」
郁人にとっては施設での生活は窮屈なのかもしれない。息が詰まる事もあるのだろう。そこから逃れるための、一時的な非難。
「郁も可哀想にな」
「は?」
「お前の鈍さは俺も、身をもって知ってるから、どうしようもないけど」
「・・・・・・馬鹿にされてんのか、俺は」
「さあ」
意味深な真壁を眉を顰め見やるが、答えが返って来そうにない。諦めた俺はまたビールジョッキを傾ける。
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