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「ちょ、ほんと、しっかり歩けよ」
「んー、あるいへるらろー」
「舌回ってねぇし」
隣から深々な溜息が聞こえてくる。真壁に支えられるようにして千鳥足の俺は夜道を歩く。すっかり飲みすぎてしまったらしく足取りが覚束ない。
「お前、太ったんじゃねぇの」
「そら、まいにひいくのうまいめしくってっから」
「そりゃいい御身分で」
引きずられるようにしながら見覚えのある景色に差し掛かり、真壁は俺のアパートまでしっかりと送り届けてくれたようだった。しかし、俺の意識はグワングワンと回り続けていて、もう目も開けていたくない。
「おい、寝るなよ。階段登れ、アホ」
「あほゆーな」
隣から聞こえる叱責になんとか反応する。辿りついたであろう部屋の前で真壁は俺の尻ポケットから鍵を探り当てる。
「くすぐってぇ」
「うるせぇ。黙ってろ」
玄関を開け、乱暴に玄関に転がされる。ほんと、ひでぇ。ひんやりとしたフローリングの床が気持ちいい。
「おい。こんなとこで寝んなよ。これ以上は面倒見ねぇかんな」
「んーさんきゅー」
でも俺、今最高に気持ちよくて眠りたい気分。だから、真壁、俺をここに置いていってくれ。って気分でひらひらと手を振る。
そのまま、意識はフワフワと夢心地。
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