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意識が浮上してくるその最中、なにか柔らかなものが唇に触れた感覚があった。不思議に思いながらゆったりと瞼を開く。
「・・・・・・ん? あれ、郁? お前、なんで・・・・・・」
意識が浮上し瞼を開いた先にいたのは郁人だった。記憶を辿る。昨日は確かに朝から郁人がやってきて、でも夕方には帰ったはずだ。その後、そうだ。真壁と飲みに行って、クデングデンに酔っ払って、その後の記憶が、・・・・・・ない。
「目が覚めた? 気分は?」
俺が起きたことに気づいた郁人に問われる。しかし郁人はどこか機嫌が悪そうだ。
「んー、頭いてぇ。・・・・・・てか、何時だ」
アタタタタ、と頭を抱えながら身体を起こす。側に落ちてたスマホを手に取り時間を確認すると夜中の三時。一瞬目を疑い二度見してしまう。
「三時って、お前、なんでここにいんだよ。施設、抜け出してきたのか!?」
一気に覚醒した頭で郁人に詰め寄ると、罰が悪そうな顔で郁人が顔を背けた。なに考えてんだ。もしかして帰ってないのか。そう考えたが、夕方俺はいつものように郁人を施設まで送り届けた。施設の中に入るまで見届けたんだから、その後出て来たか、もしくは夜中に抜け出してきたってことになる。
「すぐ帰れ。送ってってやるから」
「やだ。どうせ気づかれてないよ。朝方こっそり戻ったら大丈夫」
「大丈夫って、これまでも抜け出したことがあんのか」
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