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「ただいまー」 「お帰り、郁。疲れたでしょう」 「ううん。新幹線で寝てたから平気」  迎えてくれた母さんが俺から荷物を受け取ってくれる。金曜日の今日はお父さんはまだ仕事中だ。 「真くんのところ行ってくる」 「お母さんも行こうかしら」 「ほんと?」 「ええ。その後一緒にお茶しましょ」  そうと決まれば、と準備を始めたお母さんの準備が終わるのを待って俺の運転で向かった。高校を卒業して、働きながらお金を貯めてとった免許で、初めて運転したのがお母さんのこの車だ。その時は、隣に全、そして後部座席にお父さんとお母さんを乗せて、真のところまで走った。 「郁の運転楽しみね」なんて言っていたお母さんとお父さんは、見れば後部座席でしっかりとシートベルトを締めていて、右手でしっかりとシートベルトを握りしめていたのを見たときはおかしくてツッコんでしまった。 「楽しみとか言って、ビビってんじゃん!」  なんてケラケラと笑いながら出発したのを覚えている。
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