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「ただいまー」  月日が流れて、変わっていくもの変わらないもの。それはたくさんあるけれど。 「お帰り、全」 「あら、早かったわね」 「早起きして頑張ったんだよ。日帰りだし、少しでも長くいようと思って」  次の日、遅れて帰ってきた全は、早起きしたせいか眠たそうで機嫌が悪い。一眠りする、と部屋にいってしまった背中を見送り、お母さんと二人笑いあった。 「相変わらず、朝が苦手なのね」 「起こさないと起きないんだよ」 「あらまぁ。郁、大変ね」 「朝だけは、全の方が子どもみたいだよね」  ケラケラと笑いながらリビングに戻る。  居場所。俺の居たい場所。全の隣。そしてこの場所。俺の店。たくさん増えていくその居場所。  これから先も、増えていくだろうか。増やしていけるだろうか。 「郁―」 「あら、呼んでるわよ」 「はぁーい!」
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