14/15
前へ
/296ページ
次へ
 呼ばれて階段を上がって部屋を覗く。眠たげに布団を出して横たわった全が、気だるげに両手を広げる。 「なに?」 「昨日、一人で寝て寂しかったから。補充」 「ふふっ、なにそれ」  時折甘えてくれるようになった全に、駆け寄って抱きつくように一緒に寝転ぶ。 「コンビニ弁当は味気ないし」 「またコンビニ弁当に頼ったの?」 「料理は、郁と一緒の時にしかしないって決めてんの」 「なにそれ」 「失敗しても、一人じゃ虚しいだけだろ」  一緒に暮らし始めてから、休みの日に時々一緒に料理を作るようになった。それでも、全の料理の腕はからっきしで、もうこれは才能の問題だって全は諦めてるし。でも、一緒に作るのは楽しいっていうから続けてるんだけど。それでも簡単なものなら、全だって作れるようになったのに、俺がいないと相変わらず全は、不健康な食生活に頼り切りだ。 「郁といれば、失敗しても一緒に笑い話にできるじゃん」 「うん」 「それが楽しいから、やってんの」  全、眠くて寝ぼけてるんだろうな。普段、こんな風な事言わないのに。なんだか可愛い。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加