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 郁人にとってよくないだろうと、郁人の説得を試みたが、施設に門限さえ破らず問題を起こさなければと許可までもらってくる始末。今では俺も諦めてしまっている。 「ほんとに、きちゃダメ?」 「甘えた声出してもダメだ」 「ちっ」  上目遣いで甘えた声出した郁人がダメだとわかった途端に舌打ちをする。全く、困った奴だ。 「今日は、残業確定してるからどうせ門限までに帰れないんだ」 「なーんだ。じゃあ、そう言ってくれたらいいのに」 「それだけが理由じゃないからだ」  俺がこうでも言わないと本当に毎日のようにやって来る。放課後も、寄り道一つせずまっすぐうちにやってきて、アパートの前で待っているのだ。  高校生なんだから、友人関係の一つや二つあるはずで、十四も年上の男に割くより有意義な時間はあるはずだ。 「じゃあ、学校頑張れよ」 「はぁい。全も仕事頑張って」 「はいよ」  いつも別れる場所で郁人を見送る。郁人はいい笑顔で俺に手を振りながら歩いていく。これも、日課だ。  俺に対してあんなふうに人懐っこい郁人なんだから、友人だってきっとたくさんできるだろうに。なにが楽しくてこんなおっさんーー決して自覚してるわけではなく、あくまでも郁人から見ての話だがーーと一緒にいようと言うのか。  全く、理解ができないでいる。
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