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「樋口さん、お昼一緒にどうですか?」
十二時がすぎそれぞれに昼食を取りに出たり、デスクで弁当を広げたりし始めた頃、明るく高い声がかけられた。振り返ると、同僚の野村美緒と中野聡美が財布を手に立っていた。
「あー、ごめん。俺午後会議だから簡単に済ませようと思ってコンビニで買ってきたんだ」
「えぇ、そうなんですか。残念。今度絶対一緒に行きましょうね」
「ああ、誘ってくれてありがとう。ごめんな」
野村が残念そうにそう言って、中野を連れフロアを出て行く。すんなりと引いてくれたことに内心ホッとしつつ、買っておいてよかったとデスクの下からコンビニの袋を取り出した。
「可哀想に。今度は一生来ないだろうになぁ」
「・・・・・・真壁」
ドカッと隣の席に座りながら野村たちが去っていった入り口を眺めながら言うのは、同期で友人の真壁誠也だ。
大学からの友人のため、気心が知れている。お調子者なところが、玉に瑕だが基本的にはいい奴だ。
「期待もたすようなことしないで、はっきりと断ればいいのに」
「期待もたすって、別に何か言われたわけじゃないし。ただの自意識過剰な奴じゃないか」
「誰から見てもあからさまだろ。他のやつ誘ってるの見たことないぜ」
真壁も同じようにコンビニで買って来たであろう袋の中から冷やし中華を取り出す。せっせと準備をしながら、熱く訴えているのは、先ほどの野村の事だ。
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