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「だからって、なにも言われないうちからこっちだってなにも言えないだろ」
「向こうもそれをわかっててやってる節があるよな。女って怖いねー」
野村が、俺に対してそういう感情を多少なりとも抱いていることはなんとなく感じている。真壁すら気づくのだから、野村自身隠すつもりはないんだろう。だが、明らかな事を言われたわけではないため、どうにもはっきり白黒つけることができないままだ。
下手に牽制して、自意識過剰だと非難でもされたら、会社での居心地は最悪だ。
社内恋愛なんてそもそも、リスクが高すぎてするつもりにならない。プライベートなあれこれが仕事に影響をもたらすなんてありえないし、プライベートと仕事は切り離したい俺としては絶対にあり得ないのだ。
「ここ数年彼女いないよな。つくんねぇの?」
「あー、なんか、当分いいかな」
「贅沢ものだな。お前、モテるんだよなー、ほんと」
「そんなことないし、真壁の方がモテるだろ」
「モテてもなぁ。・・・・・・肝心な人にモテなきゃ意味ないって」
「え? 肝心な人?」
「べっつにー」
そう言いつつズルズルと冷やし中華を啜る真壁。首をかしげながらも、俺も買ってきたおにぎりにかぶりついた。
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