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『全は、私とその子どっちが大事なの』
泣きながらそんな風に言われることに慣れてきたのはいつからだったか。歴代の彼女にことごとくそう言われてフラれてきた。
俺が、なにかにつけて郁人を優先することを不満に思われ、最初は、優しい全が好きだと言っていた彼女は最後には全が優しいのは郁人にだけだ、と罵って去っていく。そんなつもりは毛頭ないのに。彼女のことだって大事にしていたつもりだった。でも、付き合いの長い、弟のような存在の郁人を優先してしまう事は確かに多かったように思う。
そんな風に毎回フラれるのに慣れ、最後に振られた時でさえ、またか、と諦めが入ったほどだった。
その結果『追いかけてもくれないのね』とさらに泣かれて最悪な別れを経験することになったのだが。
告白されて始まるのに、終わるのも向こうから。なんだかなぁ、と感じつつ。恋愛自体が面倒に感じるようになってきた。
「どうせ、次も振られる運命だから」
「郁を構いすぎなんだろ」
「構われに来るんだよ、あいつが」
真壁は郁人の存在を知っているし、会った事もある。歴代の彼女になんて言ってフラれてきているかも知っている。毎度呆れられ、適当な慰めをくれるのだ。
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